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待てセリヌンティウス



待てセリヌンティウス

セリヌンティウスは唖然とした。
かの悪友メロスに、ひさかたぶりに出会ったと思えば、いつの間にやら人質にされていた。
セリヌンティウスには事情がわからぬ。
セリヌンティウスはここシラクスの市の石工である。
石を削り、貴族に彫像を売っては日々を過ごしてきた。
けれども、とてつもない理不尽によって王の前で縛られていることだけは理解できた。

メロスは事情も知らないセリヌンティウスを、なんの説明もなく王の前に連れていき、セリヌンティウスはなんの説明もないまま兵士に縛られた。
「待て、メロス。これは一体どういうことだ!?」
セリヌンティウスは叫んだが、メロスは
「今は説明する時間が惜しい。必ず帰るから私を信じてくれ。」
とだけ言い残し、走り去っていった。


私を信じろ。
メロスがよく使う言葉である。
私、セリヌンティウスはメロスがそのように言っては裏切られていたことを思い出していた。
ことあるごとに金を貸してやっては、奴は
「必ず返す、私を信じてくれ」
と言っていた。彼の父親には恩があるゆえに、戻らぬ金と思いながら8度も与えてやった。
しかし、いまだに返って来たのは『信じてくれ』の言葉だけだ。
今回も金の相談とみていたが、まさか王の前で縛られようとは夢にも思わなかった。
さて、まずは事態を把握せねばどうしようもない。
「王様にご質問申し上げたく思います。」
「よい、わかっておる。教えてやろう。」
王はこちらを向き答えた。ここに至るまでを説明された。
私は今までの経緯を知った。
「つまりメロスは処刑されるのを待ってもらう担保に私を人質としたのですか?」
「その通りだ。私が言うのもどうかと思うが、全くもってひどい話だ。」
私の質問に答え、王は言った。
理不尽すぎる。
王の命を奪おうとしたところからめちゃくちゃである。
何故、無関係の私が命の危険にさらされているのか。
メロスを小一時間どころか一日かけて問い詰めたい。
「全く災難な男だな、セリヌンティウスとやら。」
王は言う。
全くである。
話を聞いてから2秒で人生を後悔し、3秒でまだメロスが戻る希望があるのではないかと考え、4秒でありえないとの結論に達した。


ひとこと

自分は、走れメロスという作品を理不尽に感じます
メロスは英雄のように書かれているけど、周りにいてほしくないタイプの人だなぁ

おしながき

そのうち増えるよ!
・メリーさん
・センモン(情工)
・待てセリヌンティウス
・よくある漫才の風景
・ユニクエ